EVENT REPORT|PLAYBACK

18/September/2022

eスポーツのこれから

10代、20代の若者たち”Z世代”を中心に浸透する文化、そしてコロナ禍によってここ数年でさらなる急成長を遂げている「eスポーツ」。

今回の講演会ではeスポーツ(エレクトロニクス・スポーツ)を改めて振り返り、人生においてどのような関わり方があるのか、また豊かな生き方、楽しさにつなげることができるのかを知ってほしいという願いが込められた内容となった。

講師には“eスポーツの父”と呼ばれる、NTT e-sports副社長の影澤潤一氏、東京ヴェルディクラブ理事、東京ヴェルディeスポーツチームGM他、多方面で活躍する片桐正大氏を迎えた。

再生時間:4:09

「一過性のブームに終わらせてはいけない使命がある」

 

影澤氏は自らをゲーマー(ゲームマニア)と語る一方、「仕事は仕事。好きなことは好きなこと」だとし、新卒の仕事選びは意外にも手堅かった。

NTT東日本に入社しサービス開発やNW運用などに従事。その傍ら、格闘ゲームを中心としたコミュニティイベントの企画などを20年以上手がけてきた。その実績を買われ、NTT東日本のeスポーツ事業立ち上げのプロジェクトリーダーに就任し、現職のNTT e-sportsを設立した。

「仕事の傍ら、趣味だったゲームが現在の形になった。一過性のブームに終わらせてはいけない使命がある」と話し、現在はeスポーツによるイベント事業、施設事業、教育事業などを通して地域活性に力をそそぐ。

また「日本のネットワーク技術を活かし、どのようにeスポーツで新しいことを行っていくのか。ICT技術をどう活用してeスポーツというシーンに活かせるのかを検討していきたい」と今後の課題を聴くことができた。

そしてeスポーツは、世代・性別・身体的特徴などを越えたダイバーシティの観点から“一緒に競技ができる”のが最大の特徴だと話した。

「eスポーツとはビデオゲームを通じ、対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。まさに大会に出場して上を目指すもの。ゲームにはシューター、格闘、陣取、戦略など、いくつかの種目があり、テクニックの向上はスポーツのトレーニングに近しいものがあり、世代を問わず今から始める方にぜひオススメしたい」と語った。

NTT e-sports副社長 執行役員
影澤 潤一(かげさわ じゅんいち) 氏
東京都出身、筑波大学大学院理工学研究科修了。
NTT東日本に入社、サービス開発やNW運用などに従事する傍ら、格闘ゲームを中心としたコミュニティイベントの企画などを20年以上手がけてきた。その実績を買われ、NTT東日本のeスポーツ事業立ち上げのプロジェクトリーダーに就任。2020年1月31日、NTT e-sports設立と同時に現職。

「世界で活躍する人材を育成していきたい」

 

片桐正大氏は楽天イーグルスの創立メンバーなどプロ野球2球団、Jリーグ運営会社を経て独立し、これまでリアルなスポーツビジネスの現場に携わってきた。

その中からサッカー以外にもさまざまなスポーツに取り組んでいる現在の東京ヴェルディを例に、スポーツの多様性、eスポーツへのつながりをわかりやすく解説。

草野球をするには野球のできる運動場を確保し、メンバーと対戦相手を集める必要があるが、運動施設は限られており、なかなか予約ができない。

また同じ時間に18人を揃えるのは非常に難しい都市部の現状から、コロナ禍で定着したテレワークに触れ、離れた場所でスポーツする「“テレスポーツ”だと言えばわかりやすい」と会場を沸かせた。

次に、影澤氏のNTT東日本と共同で高校教育として取り組む「eスポーツ高等学院」について紹介した。

全国に東京・大阪・名古屋・福岡の4校がある同校で「インターネットメディアが今後も拡がり続ける社会において、世界で活躍する人材を育成していきたい」と語る片桐氏。

eスポーツを学べる環境の中にも、大学進学や教職員免許の取得といったセカンドキャリアを同時に磨くカリキュラムが用意されていることを強く説明した。世界で活躍するeスポーツ選手の多くが、セカンドキャリアが無いために社会復帰することができないのが大きな理由だ。

また、引きこもり、不登校を経験した生徒の9割以上が毎日登校する状況に驚いていると話す一方、プロスポーツ選手を目指したが早くに見切りをつけて入学を決めた生徒など、さまざまな新しい出会いがある場所だと語ってくれた。

現在はeスポーツにおけるキッズワークショップにも力を入れ、プレーする選手を周りで支える現場スタッフにスポットを当てた「eスポーツを支えるさまざまなお仕事体験」を企画し人気を集めている。

選手の撮影チーム、実況、会場広報・運営など、eスポーツに関わる現場体験は、子どもたちが”ゲームで対戦する”eスポーツだけでなく、社会とのつながりを意識できる場として新鮮な経験となるだろう。

東京ヴェルディクラブ理事、東京ヴェルディeスポーツチーム GM、名古屋OJA GM
片桐 正大(かたぎり まさひろ) 氏
愛知県出身、立教大学法学部卒業。
楽天イーグルスの創立メンバーなどプロ野球2球団、リーグ運営会社を経て独立。中国、台湾、インドネシア、シンガポールでスポーツビジネスに従事、2016年プロeスポーツチーム名古屋OJA創設、2018年より東京ヴェルディ参画。

「eスポーツを日本の文化の1つに」

 

質疑応答では、大学のスポーツ教育現場でよく見受けられる「それぞれの分野でコミュニティに閉じこもりがちだ」という課題について、影澤氏は「eスポーツにおいても同じような課題がある」とし、「最近では競技間にインフルエンサーを仲介して、より互いの興味を深めて相手をリスペクトし合っていく機会をどんどん増やしている。

これはスポーツにも通じたり、芸術・アートも同じだと思う」と話した。また、ゲームソフトの更新に伴い、競技のルールや種目に変化があった場合はどのように対応していくのかという問いに、「基本的なベースがあるので、つぶしがきく。ただし王者がすぐに入れ替わるような事態はあり得る」とした。

 

最後に、司会者から「eスポーツを学問として研究してほしい内容」を聞かれ、「精神的により強く、eスポーツで一流を目指すためには」「ゲームに付随する“ネガティブ”な印象から始まるものに対し、ウェルネスの視点でどうプラスなものが生まれるのか」という意見が揃った。

現場、実情を熟知する2人から投げかけられた大きな課題たが、10年後の理想として「eスポーツを日本の文化の1つにしたい」という熱い思いが感じられた。

フリーアナウンサー
江口 桃子(えぐち ももこ)氏

公開講演会「eスポーツのこれから」

日時: 2022年9月18日(日)13:00~14:30
場所: ハイブリッド型開催(対面・オンライン)
場所:新座キャンパス 8号館5階 N853教室(一般はzoom参加のみ)
内容:

スポーツは2018年以降、遊戯性の魅力のみならず、バリアフリー性や教育的効果、高齢者の健康効果、街づくり政策などで注目を集めている。一方で、いわゆる「ゲーム障害」による心身への影響が指摘されており、科学的研究によるデータ収集の期待が高まっている。今回はeスポーツ高等学院を開設した東京ヴェルディの片桐GMと筑波大学、茨城県と連携してeスポーツ振興を展開しているNTT e-sportsの影澤副社長をお招きしてeスポーツのこれからを展望していただく。

司会: 江口 桃子氏(フリーアナウンサー)
講師: 片桐 正大(かたぎり まさひろ)
影澤 潤一(かげさわ じゅんいち)
主催: 立教大学ウエルネス研究所